肌に浮かぶ「色」には理由がある──あるニキビの告白

気がつけば、私はここにいた。鼻の横、頬の隅、少し赤みを帯びた小さな陣地。あなたが鏡を見るたび、視線は私に吸い寄せられる。「また出たの？」その声には苛立ちと戸惑いが混じっている。無理もない。私たちニキビは、思春期を過ぎたはずのあなたの肌に、なぜかまた姿を現すからだ。

でも、わかってほしい。私には、ここにいる理由があるのだ。ストレス、寝不足、食事の乱れ。あなたの心と体が積み重ねてきたものが、こうして“色”として表面に現れたのが私。赤い炎症、白く膨らむ芯、黒く目立つ毛穴──どの色にも、ちゃんと意味がある。

私は「赤にきび」。炎症を起こし、目立ち、そして嫌われやすい存在。でも、私はあなたを傷つけたいわけじゃない。ただ、注意を促したいのだ。「肌の奥で今、バランスが崩れていますよ」と。

朝、あなたは洗顔料を手に取り、私に立ち向かおうとする。泡立てたその手が私に近づくたび、私は身構える。「お願いだから、ゴシゴシこすらないで」と叫びたい。でも声は届かない。本当に大切なのは、優しく肌を包むこと。そして必要なのは、赤くなった私のような“色のサイン”を見逃さないこと。

私の仲間たちもいる。毛穴に皮脂が詰まった「白にきび」、酸化して黒くなった「黒にきび」、そして私が進化すると現れる「黄にきび」──それぞれの色は、肌の状態を語る信号機のようなもの。色を見れば、今の肌が何を求めているのかがわかるはず。

あなたが無理に私を押しつぶそうとすると、赤はさらに濃くなり、痛みをともなってしまうこともある。だから、私たちの「色」を見極めて、正しいケアを選んでほしい。赤は炎症、白は詰まり、黒は酸化、黄は膿──色の意味を知ることが、肌との正しい対話の第一歩になるのだから。

数日が経ち、あなたは少しずつ変わってきた。洗顔は泡で優しく包み込むようになり、保湿の手もゆっくりと丁寧だ。夜はスマホではなく読書の時間に。食卓には彩り豊かな野菜が並び、チョコや揚げ物ばかりだった日々が、少しずつ遠ざかっていく。あなたの生活が整うたび、肌にも変化が表れてきた。私の赤みはやわらぎ、腫れも引いていく。

そして、私は静かに消える準備をしている。もうあなたに伝えたいことは、ほとんど伝えられたから。鏡の中で、私が小さくなっていくのを見ながら、あなたはそっと微笑んだ。「あの時、ちゃんと向き合ってよかった」と。

私は、肌に現れるメッセージ。決して憎むべき存在ではなく、あなたを守るために出てくる色のサイン。どうかこれからも、その声に耳を傾けてほしい。

ニキビの色を読み解くこと、それは自分自身の心と体を知ることでもある。赤は注意、白は予兆、黒は過去の痕跡、そして黄は行き過ぎたサイン。色に気づけば、未来が変わる。あなたの肌も、あなたの気持ちも。

私は消える。でも、また必要なときには現れるかもしれない。そのときは、どうかすぐに気づいて。そして優しく、しっかり向き合ってくれたら嬉しい。

肌と心のバランスが整えば、私のような存在は、きっと静かに姿を消していくだろう。そう、あなた自身が「整う色」を選んでいけるのだから。